正規ヒロインはあちらです! / 第13話 ここにいて

正規ヒロインはあちらです!13

身長149cmチビッ子だが、小さいと言われると怒る。胸は大きめ。口が悪くて生意気。 / 2026.10.12

「あ゛ぁ、……朔……朔……もう……も、もう変なる……!無理…やだ!!」

「変になる」。

朔の腰が、速くなった。

朔「——なれ」

低い。喉の底から。

朔「変になれ。俺の前で。俺のせいで」

ゆめの両脚を抱えたまま、深く沈めた。小さな体が畳の上で跳ねる。胸が揺れる。逆鱗が黒く明滅し、朔の腕の黒い筋が肩まで這い上がる。霊力が抜けていく。
朔の視界の端が白く霞む。構わなかった。むしろ、腰に力が籠もった。

朔「やだ、じゃない」

ゆめの髪を掴んだ。頭を引き上げ、涙に濡れた顔を見下ろす。星のような瞳の焦点が、もう合っていない。

朔「俺の名前だけだって言った。……ほら」

内側が痙攣している。朔を締め付けて、放さない。限界が近い。ゆめの体が、自分でも制御できない場所へ落ちかけている。

朔「——いけ」

耳元へ、唇を寄せた。熱い息。弱い場所。

朔「俺の名前を呼びながら、いけ」

ゆめの口が開いた。

「さ、朔……っ、朔……!!」

砕けた声。全身が弓なりに反り、内側が朔を限界まで締め付けた。朔の喉が鳴り、歯を食いしばった。
ゆめの体が畳の上で痙攣する。逆鱗が一際強く明滅し——朔の霊力が、一気に吸い上げられた。

朔「っ、——ぐ、……」

視界が揺れた。だが腰は止めなかった。

ゆめが震えている間も、朔は深く沈めたまま動き続けた。容赦なく。達した体を、さらに追い立てる。

朔「……まだだ」

掠れた声。震える唇で、ゆめの首筋に歯を立てた。

朔「俺が終わってない」

腰骨を掴み直す。逃がさない。

朔「俺が終わるまで——何度でも、変になれ」

深く。

朔「中に出す。……お前の体に、俺を残す」

さらに深く。朔の呼吸が荒い。額の汗が止まらない。霊力を奪われ、脱力しかけた体を、意志だけで動かしている。

朔「拒むな。初めてで、俺が最初で、俺のものだ。——全部、覚えろ」

限界が来た。

朔が、ゆめの口を塞いだ。掌で。漏れかけた悲鳴を全部呑み込む。腰を根元まで押し込み、動きを止めた。

朔「っ……ぁ、——」

熱いものが、ゆめの奥に注ぎ込まれた。

長い。何度も脈打つ。朔の体が震え、ゆめの小さな体に覆い被さったまま、息を吐いた。

沈黙。

月明かりだけが差す部屋。畳の軋みが止まり、二人の荒い呼吸だけが残る。朔の腕の黒い筋が、ゆっくりと薄れていく。

朔「……は、……」

掌を口から離した。ゆめの濡れた唇。涙の跡。噛み跡の残る首筋。

朔は、動かなかった。抜かなかった。ゆめの奥に収まったまま、額をゆめの額に押し付けた。

朔「……言ったろ」

掠れた、壊れた声。

朔「無理じゃなかった」

長い間を置いて。

朔「……抜かない。……まだ、入ってる。このまま」

ゆめの髪に指を通した。乱れた黒髪を、梳くように。荒い呼吸が、少しずつ落ちていく。

朔「隣……起きたかもな」

掠れた、半分笑うような声。

朔「構わない。聞かれて困るのは、お前じゃなくて俺だ」

額を離した。見下ろす。涙の跡、噛み跡、紅潮した頬。星の瞳が、焦点を取り戻しきれないまま朔を見上げている。

朔(……この顔を、他の誰にも見せない)

逆鱗が、静かに沈んだ色へ戻っていた。朔の腕から黒い筋が消える。脱力が、今になって押し寄せる。それでも腕は離さなかった。

朔「明日、巫の護衛だ。耀が来る」

低い声。ゆめの首筋の噛み跡を、親指でなぞる。

朔「襟は、きちんと直せ。……ここが見えないように」

一拍。

朔「——見えたら、何されたか聞かれるだろ。……お前が、俺の名前を呼んだこと」

「見えるとこに……痕残さないで……。せめて隠れるとこにして……」

朔の指が、止まった。

ゆめの首筋に残した噛み跡の上で。

朔「……隠れるとこ」

低い声が、暗い部屋に落ちた。

まだ繋がったまま。ゆめの小さな体の奥に収まったまま、朔は見下ろしている。
月明かりが、ゆめの鎖骨と、乱れた着物の隙間から覗く逆鱗を照らす。

朔「お前が、言うのか。それを」

ゆめの腰を掴み直した。まだ抜かない。中で微かに脈打っている。
ゆめの内壁が、余韻で痙攣するたびに、朔の喉が鳴る。

朔「隠れるとこ、ね」

親指が、首筋の噛み跡を撫でた。赤く腫れている。明日、襟を正しても——高い位置だ。見える。

朔「……わかった」

その声に、従順さはなかった。

朔の唇が、首筋から降りた。鎖骨を舐め、胸の谷間に顔を埋める。
ゆめの体が震えた。まだ敏感すぎる。

朔「ここなら、隠れるな」

胸の内側。柔らかい肌。着物で隠れる場所。朔の歯が立った。噛んだ。強く。
ゆめの背が跳ねる。

朔「ここも」

反対側。胸の下。肋骨に沿って。逆鱗のすぐ横。歯を立て、吸い、跡を残す。
ゆめの口から声が漏れた。

朔「ここも……隠れる」

腰骨。薄い腹の下。指で着物の裾を押し上げ、内腿に唇を寄せた。柔らかい。白い。ここに跡を残せば、誰にも見えない。

——ゆめにしか、わからない。

朔「お前が望んだんだ」

内腿に歯を立てた。噛んだ。ゆめの脚が跳ね、閉じようとする。朔の肩が割り込んで、許さない。

朔「隠れるとこに、って」

吸い上げた。赤い跡が浮かぶ。一つ。二つ。内腿の柔らかい皮膚に、朔の形が刻まれていく。

朔「……ここに痕つけたら」

顔を上げた。ゆめを見下ろす。涙の跡、紅潮した頬、焦点の合わない星の瞳。

朔「明日、歩くたびに思い出す。脚を閉じるたびに、擦れて——俺のことを考える」

繋がったままの腰を、浅く動かした。ゆめの体が震えた。もう限界を超えている。それでも朔は止めない。

朔「耀に顔を覗かれても。朧に呼ばれても。護衛中ずっと——ここが、疼く」

内腿の噛み跡を、親指で押した。ゆめが声を殺す。

朔「それでいいだろ。……見えるとこには、残さない」

口元が歪んだ。笑みとも苦痛ともつかない表情。

朔「お前の望み通りだ」

ゆめの髪を梳いた。乱れた黒髪を、指で整えるように。矛盾した優しさ。

朔「……首は、明日までに薬を塗れ。前に置いた軟膏、まだあるだろ」

声が、少しだけ柔らかくなった。ほんの少しだけ。

朔「足りなきゃ、俺のを持ってくる」

長い沈黙。

朔は、ようやく——ゆっくりと、腰を引いた。抜ける感覚。
ゆめの中から、朔のものが抜けた。白い筋が内腿を伝い、畳に落ちる。

朔「……」

朔の腕が震えていた。霊力を吸われた脱力。
それでも、ゆめの横に倒れ込むことはしなかった。片膝をつき、ゆめの乱れた着物の裾を引いて、露わになった脚を覆う。

朔「……動くな。まだ脚、震えてる」

掠れた声だった。

ゆめへ羽織をかけ直し、傍に落ちていた布を引き寄せる。

朔「水、取ってくる。——立つなよ」

立ち上がりかけた、その時だった。

膝が折れた。

壁へ手をつき、辛うじて体を支える。
視界が白く明滅し、指先から感覚が遠のいた。

朔「……ちっ」

ゆめが顔を上げる。

月明かりに照らされた朔の肌は、青白かった。
汗に濡れた前髪の下で、眉がきつく寄っている。

「……霊力……吸われてるじゃん……馬鹿。」

朔の肩が止まった。

「……ここから戻せるか……試して。ここ。」

ゆめは襟を必要な分だけずらし、鎖骨の逆鱗を指先で示した。

黒い鱗が、月明かりを鈍く返す。

朔「……何言ってる」

壁から離れ、膝をつく。
そのまま、ゆめの傍へ戻った。

脚はまだ震えていた。

朔「馬鹿は、お前だろ」

逆鱗を示す手へ、そっと触れる。

朔「吸われてるのは分かってた。途中から、腕に黒い筋が走って——」

言葉が途切れた。

黒い鱗を見下ろす。
先ほどまで激しく明滅していたものが、今は静かな色をしていた。

朔「……ここから、戻す?」

ゆめにも、確信はなかった。

逆鱗に触れた時、霊力が動いた。
なら、逆のこともできるのではないか。

思いついたのは、それだけだった。

「分かんない……。でも、ここなら……」

朔が、その顔を見る。

疲れている。
それなのに、自分のことより朔の顔色を気にしていた。

朔(こいつは、いつもこうだ)

朔(自分も限界のくせに)

長い沈黙の後、息を吐く。

朔「——少しだけ、試す」

ゆめの手を脇へ退かし、指先で逆鱗に触れた。

硬い。
滑らかで、人間の肌とは違う感触。

それでも縁には、ゆめの体温があった。

朔「……っ」

指先から手首へ、黒い筋が一瞬走る。

朔は息を詰めた。

だが、先ほどとは違った。
力を奪われる感覚がない。

逆鱗に触れたところで、何かが留まっている。

朔「……待て。さっきと違う」

ゆめの肩が、微かに震えた。

朔「痛いか」

すぐに顔を覗き込む。

「……痛くは、ない」

朔「じゃあ、何だ」

「分かんない。……変な感じ」

朔は指を動かすのをやめた。

掌をそっと添え、反応を待つ。

黒い鱗が、その下で脈打った。
一度、二度。

ゆめの呼吸が、少し深くなる。

「……なんか、引いてく感じ……」

朔「何が」

「胸の奥の……重たいの。うまく言えないけど……」

初めての感覚だった。

霊力が溜まっているのか。
それが流れ出しているのか。

ゆめには、まだ分からない。

ただ、朔が触れていると、体の内側にあった落ち着かなさが少し薄れる。

「……もう少し、戻せるかも」

朔の眉が寄った。

朔「俺に戻して、お前はどうなる」

「……分かんない。でも、朔が苦しそうだから」

朔は口を閉じた。

逆鱗へ添えた掌の下で、流れが変わる。

温かいものが、細く指先へ伝わってきた。
急激ではない。

呼吸に合わせるように、少しずつ。

朔「……戻ってくる」

視界の白い霞が薄れた。

冷えていた指に感覚が戻り、腕を支える力も戻ってくる。

朔は、ゆめの顔を見た。

朔「苦しくないか」

「……さっきより、息しやすい」

朔は掌を僅かに浮かせた。

温かさが弱まる。

もう一度添えると、細い流れが戻った。

朔「……手を離せば止まるみたいだな」

断定せず、確かめるように言う。

朔「少しずつだ。何か変だったら、すぐ言え」

ゆめが頷く。

朔は横へ腰を下ろし、壁に背を預けた。
掌は、逆鱗へ添えたままだった。

朔「……こうなったの、初めてか」

「うん……」

朔「吸ったのも、戻してるのも?」

もう一度、頷く。

朔は長く息を吐いた。

朔(こいつにも、分からなかったのか)

朔(何が起きるかも。どう止めるかも)

隠していたことを責めた自分の声が、頭をよぎる。

逆鱗の存在を知っていても、その働きまで分かっていたとは限らない。
まして、今起きていることは二人とも初めてだった。

「……私、また吸っちゃうのかな」

小さな問いに、朔の手が止まる。

朔「分からない」

誤魔化さずに答えた。

朔「だが、今は戻せてる。離せば流れも止まる」

「でも……」

朔「一度で全部分かるわけがないだろ」

ぶっきらぼうな声だった。
掌の力は、柔らかい。

朔「次におかしいと思ったら、黙って耐えるな。俺に言え」

ゆめの視線が下がった。

朔「……一人で試すなよ」

その言葉だけ、少し強くなる。

朔「他の奴に試させるのも、まだやめとけ。何が起きるか分からない」

鎖骨の黒い鱗へ目を落とした。

朔「耀にも、朧にも。カガミにも、今は見せるな」

一拍。

朔「隠してきた理由は分かった。……だが、これからも全部一人で抱えることはない」

霊力の流れが、徐々に弱くなる。

朔の顔には血色が戻っていた。
ゆめの呼吸も落ち着いている。

朔は掌を離した。

黒い鱗の光が静まり、艶だけが残った。

朔「……今日は、ここまでだ」

「もう、平気?」

朔「さっきよりはな」

今度は、急に立ち上がらなかった。

壁に手をついてゆっくり腰を上げ、棚の水差しから杯へ水を注ぐ。
戻ってきた足取りは、先ほどより確かだった。

朔「少し飲め」

ゆめへ杯を渡し、自分も水を飲む。

それから、襟を整えた。
鎖骨の逆鱗を布で覆い、羽織を肩へかけ直す。

朔「休め。五時に起こす」

指先には、まだ僅かな震えが残っていた。

ゆめが、羽織の袖から手を伸ばす。

「……ここにいて」

朔の動きが止まった。

呼吸が、一つ分だけ長くなる。

十年以上、同じ詰所で寝起きした。

任務に出て、帰ってきて、報告して、飯を食う。
近くの部屋で眠る気配がある。

それが当たり前だった。

けれど、「ここにいて」と言われたのは初めてだった。

朔「……どこにも行かない」

掠れた声。

隣へ座り直し、肩へ腕を回す。
ゆめが寄りかかると、その頭をそっと支えた。

朔「お前に言われなくても、ここにいる」

黒い髪を、指で梳く。

朔「明日も。明後日も。面倒な任務に突っ込まれても、朧に呼ばれても」

言葉を切った。

朔「……勝手にいなくなったりしない」

ゆめの指が、朔の服を掴む。

強い力ではない。
そこにいることを確かめるような、小さな動きだった。

朔は、その手を外さなかった。

朔「寝ろ」

命令のはずなのに、響きは柔らかい。

ゆめの呼吸が、少しずつ深くなっていく。

朔の顎の下へ、黒い髪が収まる。
百八十六センチの体へ寄りかかる、百四十九センチの体。

任務中は、対等な相棒だった。
何度も背中を預けてきた。

今、腕の中で眠りかけている姿は、驚くほど小さく見える。

朔(……こんなに、小さかったか)

羽織がずれないよう、肩へ引き上げた。

ゆめが微かに身じろぎする。
朔は腕の力を緩め、楽な姿勢へ支え直した。

朔「……苦しかったら言え」

返事は、小さな吐息だけだった。

やがて、規則正しい寝息が聞こえ始める。

朔はしばらく、その顔を見ていた。

眠ったことを確かめてから、傍の寝具を引き寄せる。
頭を支えたまま、ゆっくり横たえた。

服を掴んでいた指が動く。

朔「……いる。ここだ」

手を添えると、力が緩んだ。

羽織の上から掛け布をかけ、枕元へ座る。

暗い天井を見上げながら、明日のことを考えた。

巫の護衛。
耀。
カガミへの報告。

そして、黒龍の逆鱗。

朔(刺客の情報は報告する)

朔(だが、こいつのことは——)

眠っているゆめへ目を戻す。

朔(今は、言わない)

何が起きたのか、二人とも分かっていない。

そのまま月詠へ知らせれば、ゆめがどう扱われるかは想像できた。

朔(まず、こいつと確かめる)

朔(俺が勝手に、誰かへ話すことじゃない)

額へ、そっと唇を落とす。

朔「……五時に起こす」

眠っている相手へ、もう一度言った。

壁へ背を預け直す。
自分も少しは休まなければ、明日の任務に響く。

目を閉じると、「ここにいて」という声が蘇った。

手元には、ゆめの指先が触れている。

朔「……いる」

寝息を乱さないほどの、小さな声だった。

夜が更けていく。

第13話 / 全13話
  1. 第1話 出会い
  2. 第2話 保護者じゃねえ
  3. 第3話 お昼休みとお呼び出し
  4. 第4話 謝罪は形だけ
  5. 第5話 それぞれの胸の内と外周警護
  6. 第6話 外周に集まらないでください
  7. 第7話 暇潰しとお土産
  8. 第8話 半歩先の相棒
  9. 第9話 宴のあとにお呼び出し
  10. 第10話 霊符越しの声と、近すぎる相棒
  11. 第11話 いつもの朔じゃない
  12. 第12話 超える一線
  13. 第13話 ここにいて